南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

信阳編3:南湾、帰路1

朝8時、頭痛もとれてスッキリ、板栗をしばしバリバリ食って出発。公交2路に乗って終着が南湾湖景区。浉河(南湾水库を水源とする)が流れるため、信阳の市区は狭い。中山路と东方红大道の交点が中心地だが、その繁栄度は开封と競ると思った。この地の気候なのか、湿度を开封より感じる為、埃っぽさはないが。
107国道を越えると山あいを走る。鸡公山へ向かうときと同様、道に勾配を感じる。そして、この辺は信阳师院を中心に学校が多い。
ここもバスを降りると、大きな歓迎門があって、さらに500mほど歩く。浉河の支流を渡って風景区の雰囲気が出てきたところでビックリ。入場料が60元で、学生証が効かない。ぐぇ。鸡公山とのギャップが激しい。これで更に猿島などへの乗船にまだ30元も取るのだからヒドい。
ゲートから船着場まではミニバスが出ている。最近キャンパスでも採用されたオープン型だが、約3kmなので歩くことにする。弱冠迷わされたが、湖岸に出ると天気の悪いなりにその美しさに見とれる。特に天候といい、山に囲まれた湖面といい、湖岸を走る道といい、支笏湖をサイクリングした時の記憶に重なる。湖岸はかなり入り組んでいて、湖全体を見通せる場所は数少ない。それだけ逆に小さな湾になった水辺の風景が、また面白い。それぞれが各々の姿かたちをみせてくれる。これは码头を過ぎて奥へ向かっても同じで、そこに農村風景も加わってぐっと絵になる。先に述べたとおり、乗船に30元要するので乗らない。観光案内所や売店、食堂も集まって、日本語も付されているから一応4Aらしい。「南湾魚」の看板が出ているので、暫く湖岸を散策してからお昼に頂いてもいいと思った。
码头から先、道は格段に悪くなる。生活道路だからだ*1。ポツリポツリと旅馆や饭馆に出くわし、信阳茶直売の矢印を見かける。湖に突き出した半島の根元は山だから、一つ一つ越えては入り江を望む、というパターンになる*2。目前まで湖面だったり、かなり埋まって広い畑だったり、その光景はまちまち。ふっと振り返ると日本の山村と見違えるのは、不思議である。天候か風土か、信阳のイメージは湿潤だった。
帰路の体力を考えて切り上げ、船着場に戻る。魚を一人で食う意気はなく、茹でもろこしをかじりながら遊覧船を見送る。最後に行っておきたいのが、南湾湖大坝。即ちダムの締切堤。外装はまだ工事中だが、強固なコンクリの壁を伝って歩くと、右手に満々と淡水湛える湖(霧の中かすかに島が)。左手に信阳市区を望める(はず)。正面には笔架山がそびえる。さすが「中原第一湖」である。うん。
やっぱり市区に帰ってから昼飯。水餃。板栗を探しに出るも、腹痛を訴えトイレに駆け込み萎える。結局駅近くの屋台で買った。昨日、割れているのは虫食いや腐敗が多かったので、割れていない方を購入。バッグ内はほぼ栗だらけ(笑)。天気は3日間で最も良いほうだが、他にすることがないので入站してしまう。中の空気は悪い。〔列車情報:T206次、信阳17:39発-郑州20:18着、无座47元〕
信阳での停車時間は2分である。そのため比較的早く改札を行って客をホームへ出し、乗車位置へ並ばせる。ところが、予想停車位置と実際停車地点は異なり、整列も空しく乗車口の争奪戦となる。幸いこの列車は数分早めに到着した(珍しい)ので、ほぼ定刻で発車できた。この列車を選んだ理由は何と言っても“特快”である。开封では乗れない。だからこそ、特快の魅力的スピードを発揮してもらわねばならない。市区を出て間もなく、それはリアルになった。日本の特別快速、新快速を思い起こさせる、あのスピード感を楽しませてくれた。小駅を通り過ぎるときの快感、優越感。それは驻马店を出て、終点郑州まで持続されるかに思われたその時、漯河を過ぎた小駅で突如停車してしまった。後から考えると、これは平顶山から京广线に合流する地点で貨物列車等が遅れたせいではないかと思われ。ただ私には大事な計算がある。この列車が定刻で20時18分(10分までは遅れても良い)に郑州に着き、郑开公交最終便20時45分に間に合わないと、今日中に开封に帰れない。結局ここで20分余停車したが、その後1時間強の走行の間にこの遅延を縮めることはできなかった。まぁ日本でも縮める列車と敢えて縮めない列車があるから、傷口を更に広げなかっただけ「T」の威力を証明したといっても良いだろう。
ともかく終始乗降口に立っていた私は1,2を争って下車し、連絡通路を小走りに抜け、それでいて改札では切符をもぎ取るのを忘れず、駅前広場に駆け上がる。脇目もふらず二马路汽车站へ着いてガックリ。ターミナルは既に真っ暗。この時少し落ち着いて三輪オヤジの「开封?」に耳を貸していれば、今日中に开封に帰っていたかもしれない*3。が、列車を選んで計算した後のこういう結果にかなり落胆していた。
しばらく思案した後、せっかくなので更にネタを追求して帰ることにした。それはN306次に乗ることである。この列車は面白い点が幾つかある。まずN(「管内」の略称)というだけでも切符ゲットは大きいが、この列車始発が郑州で終点が开封である。つまりこの広大な中国の、郑州管区内といっても広い河南省の、たった73kmしか運行しない列車なのだ。それでいて普快だから、一つも途中停車しない。次に、この列車は事実上の回送である。西安から郑州に着いた列車を、06:55开封発西安行きにする為に移送するついでに、一両だけ客を入れる、という格好なのだ。10両以上つながっているのに、たった一両しか客は乗れない。そしてもう一つ、国慶節で大混雑、大混乱している中、乗車わずか8時間前に切符を買って席が取れてしまう列車なのである。5日前、1週間前争うように席を求めている方々には申し訳ないほど、あっさりと硬座を手に入れて、気分晴々とマックに向かった。〔列車情報:N306次、郑州05:50発-开封06:35着、硬座11元)
少々ゼータクだけれども、郑州で宿をとる気はないので、その分食べておく必要がある。フィッシュフィレオとポテト、コーラを頬張って、即待合室へ。N306は本当に付録みたいな列車だから、一階の片隅にある。滅多に発着のない忘れ去られたような待合場で、2時間半おきとかにしか改札がないので、静かにボーッとしていられる。
つづく

(map:信阳南湾湖)

*1:農道には結構犬がうろついている。遊覧船の向かう先は猿島鳥島だから、見事桃太郎だと思った。

*2:時々遠方まで望めて、島が見えることも

*3:徳亿站はこの時期から、22時半まで开封行きの運行を延ばした