南蛇井総本氣

南蛇井にとらわれた言語的表現の場

信越の旅 1:中越

はじめに(天橋立vs親不知)

コロナ禍に遠慮して中部と近畿をちまちまするのも飽き、少し大胆にやろうと思う。
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日本海側のちょっと遠方を検討し、丹後と新潟が浮上。京都丹後鉄道2日間フリーパスを軸に組んだ丹後(天橋立)はしかし、青春18きっぷシーズンでない時期のJR運賃*1に二の足を踏む。
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新潟採用の決め手は以下の3点。

  1. えちごツーデーパス(2740円)と信州ワンデーパス(2680円)が越後川口で繋げるじゃん!
  2. 信州ワンデーパスで塩尻まで来れば、勝川まで普通乗車券2640円*2で帰れるじゃん!
  3. 行程を三日間で収めれば一日当たり約2600円で、18きっぷ1日分の2410円とまぁ大差ないじゃん!

新潟へのアクセスルート(当初は往路または復路の両面から検討)は、空路と高速バスの2つを徹底研究。その結果、FDAのバースデイ割に匹敵する安さで夜行バスアミー号に決した。高速バスといえば名鉄バスであり、今回検討するまで存在すら知らなかった会社だが信頼性はどうだろう。夜行を選んだのはえちごツーデーパスをめいっぱい活用するため。名鉄バスだと新潟市へ近づくにつれ停留所が高速道路上となり、JR乗継に不便。唯一駅に最寄りの高田(えちごトキめき鉄道春日山駅)だけは惜しく、復路なら利用したかった。
初めて企画する新潟の見どころは、一昨年の「信濃路の旅」で逃した親不知以外サッパリ分からないので、フリーきっぷで立ち寄れそうなところを中心にピックアップ。メインは新潟だが3日目は飯山線をはじめ長野県を突っ切ってくるので、シリーズ名は二国とする。2018年四国一周以来のGW遠方新天地企画、新潟とはどんなとこだろう。
レイルラボでみる今回の旅程(往路夜行バスを除く)

アミー号新潟行き

4月30日22時、名駅西口へ。発車20分前集合ということで余裕みて行った。JRハイウェイバス待合所に接するゆりの噴水には夥しい格安夜行バス利用者が待機しており、とくにベトナム人の姿が目立つ。協会スタッフがバス会社や発車時刻を記したボードを掲示して、およそ15分毎の発車時刻順に乗車地へ案内している。目の前のロータリーはJRバス専用で、格安バスはリニア新幹線工事を回り込んだ先の駅北端で乗車する。集合場所にバスの姿が見えないことで戸惑う人も多い。また同じバス会社の名駅発でも乗車場所が異なり、2019年利用した大阪行きWILLERはビックカメラ前だった。この辺もスタッフに確かめないと危うい。しかしまぁ、ここに集結する格安夜行バス会社の数とベトナム人の多さには正直驚いたな。林立するビルのせいか強めな風が肌寒く、22:45にしか乗車案内されなさそうなので専ら地下で時間つぶし。
手元に用意した予約受付メールなどは乗降口で一切確認されず、氏名のみで済む。ところがバスに掲示された座席指定リストではカタカナの氏名が間違っており、席移動かに思われたが誤植訂正で済んだ。そいえば予約者名は漢字入力なかったな。バスは前半分が3列独立シート、後半が4列ダブルシート。予約時に座席希望しなかった私は後者の最前列になってた。終点新潟ではなく長岡降車なので通路側は正解。凍えるほど冷房効いてた先述WILLERと違い、終始快適な空調だった。23時過ぎ、ほぼ定刻出発。SAでの休憩は1.5時間ごとにとるという。もともと夜行バスでは眠れない質なので暗闇に目を閉じるだけでも休まる。通路はさんだ隣席が、消灯後もバックライト落としつつゲームし続けてたのは気障。0時過ぎ、恵那峡SA。長いトンネルなら恵那山トンネルだと感づくからもう過ぎたと思ってたので、些か驚き。2時過ぎ、梓川SA(松本)。これも恵那峡出てから長かったのでさすがに長野市ぐらいかなと思ったので、まだ松本かよッと愕然とした。初めて夜行バス利用した徳島行きが到着予定時刻を大幅に早まったので、今回も30分ぐらい縮めると見込んできたのだが甘かったと気づく。この梓川からが一番しんどく、年齢的に夜行は終いにすべきかもと思った。渋滞こそ全くなかったが、おそらく妙高を越えると思われる区間は明らかに低速に感じた。新潟の平野部に出ると再び加速した。そして4時半、最後の休憩地米山SA(柏崎)。アプリ計測で長岡駅まで車38分と算出、ほぼ定刻(05:15)着だと確信まぁ安堵した。カーテンの隙間から白み始めた空を見ながら北陸道をひた走り、5時ちょうど長岡ICをおりる。降車地はアオーレ長岡前とかあったので駅との距離に不安を覚えるも、なんだ真ん前じゃないか。

JR長岡駅

古い商店街らしき駅前通り(大手通)と駅ビルの間に歩道橋を張り巡らした、ちょっと異様な駅だと思う。まず、えちごツーデーパスを指定席券売機にて購入。JR東日本では、みどりの窓口の代わりに指定席券売機でもおトクなきっぷを買える。初めて利用する端末機もスムーズに扱えた。温いコーヒーと軽い朝食を買い、予定通りの始発列車に乗り込む。ちなみに今日の天気は雨。朝の長岡こそ曇天に迎えられたが、弥彦までももたなかった。また終日肌寒く、長袖の肌着着てって正解だった。

弥彦

早朝を有効に使うならお宮参り、ということで真っ先に目をつけたのが彌彦神社越後国一宮といわれる。弥彦山に登って日本海を望む余裕はなさそうだが、参道散策は楽しめそう。ところが弥彦線がくせもので本数と接続が芳しくなく、弥彦滞在時間と後の予定を組み立てるにはどうしても長岡5:36発の電車に乗らないとうまくいかない。それで夜行バス長岡定刻着にヤキモキしてたわけだ。
まずは信越本線北へ。初めて見る新潟の車窓。さすが米どころ、田んぼ一枚一枚がデカい。愛知の水田とは比べ物にならない。弥彦線に乗り換え東三条駅を出たとたん、右手に火災現場があらわれギョッとした。また沿線で目につくのは空き家や荒れ地。スラムでもないのに線路沿いがこんなに荒廃してるのはあまり見たことない。JR線では珍しく軒先迫るような区間もある。燕や三条は新潟の地名として聞き覚えあるが、こういうところかと。いつしか窓ガラスに細かい水滴がつき始める。越後線との交差駅吉田でほとんど降りていく。まもなく赤い大鳥居が右手にみえ、ここから参道なんだなと。

神社を模したJR弥彦駅

線路の途切れた弥彦駅。朱塗りが派手な構えの駅舎。小雨よりは弱雨な感じで、参道まではジャケットフードで凌ぐも境内からは傘をさす。「弥彦温泉マップ」を片手に参宮通り(小路)を近道で神社へ。

彌彦神社一の鳥居

背の高い木々に覆われ、湿った空気に包まれる境内。

彌彦神社拝殿

弥彦山を背後に抱く拝殿。早朝の雨天とあって、参拝者も疎らなおかげでゆっくりお参りできる。御神木とか境内をくまなく散策するもやはり時間余る。

かつての手水場

温泉街の神社通りには旅館や飲食店が建ち並び、温泉まんじゅうの店もある。通りを少し外れると巨木を祀った祠が点在。

蛸欅(たこけやき)と、上諏訪神社

外苑坂通りから弥彦公園を抜けて駅へ戻る。温泉源泉所を過ぎると桜並木の先にふいに堅固なトンネルが姿をあらわす。

弥彦公園トンネル

レンガのアーチが見事なトンネル。国の登録有形文化財に指定され、大正7年頃の建造だそう。てっきり坂道の緩やかさと弥彦線から自然に続くような導線をみて軽便鉄道廃線跡かと考え調べるも、初めから人道トンネルのようだ。年季が入って一層風流。

弥彦線末端(背後は弥彦公園

次の予定は小千谷だが、このまま三条へ戻るにも接続が悪く、最もスムースな乗継で乗り鉄するのに越後線を選ぶ。生憎の天候とはいえ、早く日本海を見たい。が、柏崎行き普通電車に乗り換えても一向に海は見えない。両側を山に挟まれた狭隘な農村地帯を伝っていく。寺泊や出雲崎なんて沿岸部のイメージなのに。原発でおなじみの刈羽も、駅は内陸にあるらしい。ちょっとアレレ?な気分で柏崎。長岡方面への信越線は快速電車。柏崎を出ると来迎寺(らいこうじ)と宮内しか停まらない。鈍行は明日乗るとして、やはり谷状の狭い田園が特徴の車窓をぼんやり眺めていく。上越線は宮内で乗り換えれば良いが、乗継短縮と乗りつぶしの両面から長岡駅まで戻る。

小千谷

親不知以外で一番最初に思いついた、新潟イメージの筆頭格。昔小学校の社会科で新潟県について学ぶ機会があり、小千谷縮(ちぢみ)が強く印象に残る。昼前後一時的にやむ予報ではあったが、街歩きは厳しそうだから資料館とかあると良いなぁ。
小千谷に着いたらまず食べたいもの、それはへぎそば信越地方のコシの強いそばを「へぎ」と呼ばれる箱(もとは杉板)に一口サイズに小分けされて提供される冷蕎麦。11時、ほぼ開店と同時に駅前の小千谷そば 和田へ。へぎそば一人前は即決だが、組み合わせる単品メニューが乏しい。暫し悩んでえび天を付ける。へぎそば膳にサラダがついてたのは幸い。

小千谷へぎそば

ホントうどんかと思うほど歯応えあって、普段のざるそばのように軽く啜れない。小分け分くらいは啜りたくもなるが、つゆ鉢で2回に分けるのが妥当。よくよく噛んでコシと蕎麦の香を味わうべし。一本きりのえび天は揚げたてで美味しい。厨房にはアルバイトか家族か若いスタッフがわさわさ居てちょっと不慣れな感じ。ごちそうさまです。
やむどころかフードで凌げない雨量に辟易したが、有難いことに小千谷駅前からの商店街はアーケード歩道がつづいている。信濃川橋上を除いてまったく切れ目なく続いていてホント助かった。日本最長の信濃川、初日は濁流で拝むことになる。(雨で増水気味とはいえ)まだ中流なのに結構川幅あるのと、そんな大川が市中のど真ん中を突っ切る小千谷の町が驚き。信濃川左岸(小千谷中心部)はやや高台になっていて、橋を渡るとぐっと登る。
雨が弱まらないので、小千谷市総合産業会館サンプラザでまったり過ごすことに。小千谷縮に関する簡単な資料展示と体験工房、小千谷の物産店とレストランを設けている。織之座では、織物を雪に晒す光景しか知らなかった小千谷縮について、通気性が良く美しい柄の布地ができる工程を初めて詳しく学んだ。苧麻からの糸づくり、糸染め、湯もみなど本当に込んだ作業を経て織られるのだ。資料室ほどなのに密の濃い勉強になった。天候の都合により、今回は初日ながらお土産購入を先行。さきほど食べたばかりのへぎそばを実家向けに買う。そして匠之座にて多様な小千谷縮越後上布の製品を眺めるうちに、何か一つ欲しくなった。伝統工芸の保存を応援するつもりで、かすり柄の綺麗なコースターを1枚求める。
最後に、併設する錦鯉の里を見学。江戸時代、小千谷で食用に飼われていた鯉に突然変異で色のついた鯉が現れたのを徐々に改良していったのだという。紅を基調としたものから、黒や金色に輝くものまで多様な種類の錦鯉を鑑賞することができる。

巨大な鑑賞池の錦鯉群と、平和を祈念してウクライナ国旗に変色された錦鯉

雨でなければ日本庭園の錦鯉も愛でたかったな。ちなみに小千谷駅前にも錦鯉が泳いでいる。

錦鯉を模した地下通路口(小千谷駅前)

宮内(長岡)

15時過ぎ、宮内駅にて本日のJR行程は終了。この駅前が今夜の宿、竹花屋旅館だ。チェックイン前にもう一つ見に行きたいところがある。雨天によほど荷物だけでも預けていこうかと思ったが、徒歩10分そこらの距離と知り背負ったまま行く。江戸時代に三国街道が通り、幕府の天領となって発展した醸造・発酵産業のまち、摂田屋(地区)。雁木がぽつぽつ残る県道をゆくと、酒麹の香りが辺りに漂い始める。吉乃川 酒ミュージアム醸蔵だ。利き酒もできるというミュージアムは酒造工程を展示しながら、バーも併設している。よほど試飲したい欲望に駆られるも、他の蔵も見たいので見学のみに収める。立ち込める麹の香に酔いしれながら界隈を見物。

旧機那サフラン酒の鏝絵と、吉乃川の古い蔵

県道この先にある味噌屋さんは見落とした。少し戻って吉乃川を裏手へ回ると、越のむらさきという醤油屋。創業180年の歴史を持つ。

越のむらさき

レンガ造りの煙突は2004年の中越地震で損壊するも修復されたという。東日本大震災もあって忘れ去られつつあるけど、地震の爪痕は確実に残っている。また、諸説あるもののちょうど醤油工場の中を旧三国街道が通っているらしい。

醸造工場の中をゆく三国街道

かくして降雨に何とか耐えながら楽しんできたけど、ずぶ濡れ限界。予定を切り上げて宿入りする。衣類等を乾かしながら、夕飯時まで暖かい部屋でくつろぐ。窓からはちょうどJR線を望めるのだけど、翌朝との2回ほど濃紺のディーゼル列車が走行するのを見かけた。今日乗ってきた信越線と上越線はともに電化されていたので訝しく、帰宅後に調べると越乃shu*kuraという新潟県内で運行するイベント列車だそうな。飯山線区間を含むため気動車なのらしい。興味あり。
www.jreast.co.jp
19時ごろ、最寄りのスーパーへ夕飯を買いに出る。女将さんからは地元で有名だという向かいのラーメン店(青島食堂)を勧められたが、朝パン・昼蕎麦だったのでご飯が食べたい。上越新幹線の線路沿いにスーパーやファストフード店が集まっている。新潟のスーパーチェーン原信(はらしん)で弁当、そして先ほど麹の香に魅了された地酒吉乃川を買う。じっくり味わってみたかったんだ。宿へ戻るころにはすっかり雨あがり。

地酒吉乃川と、新潟特製ソースかつ丼

辛口なのにめちゃくちゃ飲みやすい吉乃川。スーッと喉に染み渡るような味わいに感激。これも土産にしたいくらい旨かった。食事を楽しむ程度のほろ酔いで済み、温かい風呂に浸かって就寝。雨と寝不足のわりには、グルメに観光に充実した一日だったな。

信越の旅 2:上越へつづく)

*1:乗継箇所を精査して削りはした

*2:青空フリーパスを使うと塩尻木曽平沢が不便